猫の慢性腎臓病(腎不全)について【越谷どうぶつ病院】

慢性腎臓病(腎不全)とは

 

腎臓の機能が長い年月をかけて徐々に低下していく病気で、高齢の猫に多く見られます。

猫の死亡原因としては癌に続いて2位となっています。

慢性腎臓病(腎不全)の症状

 

初期から中期にかけては以下の症状が見られます。

 

よく水を飲む

薄くて量の多いおしっこ

・食欲不振(まずは食べむらから始まる)

・痩せてくる

時々吐く

・貧血

・脱水

 

末期になると、尿量の減少~無尿、飲水量の低下、便がでない(食べていない為)、神経過敏な様子、けいれん発作なども見られることがあります。

 

慢性腎臓病(腎不全)の診断

 

慢性腎臓病(腎不全)の診断には上記の症状に加え、血液検査での腎数値の上昇、尿検査における低比重尿、蛋白尿、超音波検査において腎臓のサイズや形状などから複合的に判断します。

 

慢性腎臓病(腎不全)のステージ分類

 

慢性腎臓病(腎不全)にはIRIS(International Renal Interest Society)の提唱する4つのステージからなる分類があります。

 

 

ステージ1~2(クレアチニン値 <2.8mg/dL あるいはSDMA 26~38μg/dL)

 

元気や食欲はありますが、多飲多尿が見られ始める時期です。

処方食への切り替えや腎臓薬の投薬を検討します。

2~3か月ごとの検診が推奨されます。

 

ステージ3(クレアチニン値2.9~5.0mg/dLあるいはSDMA >38μg/dL)

多飲多尿に加え、食べむら、食欲不振、体重減少、嘔吐などの症状が見られ始めます。

腎臓薬の投与に加え、脱水に応じて皮下補液か静脈点滴を検討します。

月に1回の検診が推奨されます。

 

※腎臓病の猫は同時に心臓病や甲状腺疾患を併発していることもあるため、点滴のし過ぎには注意が必要です。

吸収しきれなかった水分が胸水として胸に溜まり、呼吸が苦しくなることがあります。

 

ステージ4(クレアチニン値>5.0mg/dL あるいは SDMA >38μg/dL)

末期の腎臓病状態であり、腎臓の残り残存機能は10%以下と言われています。

重度の食欲不振、削痩、嘔吐、飲水量の減少、場合によっては神経症状もみられることもあります。

 

※一方で適切な治療をしながらステージ4を迎えた猫では元気・食欲を維持できているケースも多々あります。

それ故、健康診断で早期発見し、適切な治療を開始することがとても重要です。

当院では一般的な腎臓病の治療に加え、鍼や漢方などの治療も行っております。

これらの治療は腎臓を回復させるものではありませんが、血行が良くなり、食欲が出るなど全身状態の改善に役立ちます。

ご興味のある方は当院までご連絡ください。

 

鍼灸・漢方治療に関してはこちら

 

腎臓病に併発する疾患

 

高血圧

慢性腎臓病をもつ猫では高血圧になっているケースが少なくありません。

高血圧状態が続くと網膜剥離や眼底出血による失明や、腎出血による血尿、脳出血による意識喪失、けいれん発作などの重篤な症状が突然出ることがあります。

そのため定期的な血圧測定をおすすめしております。

基本的には来院時に血圧を測定しますが、緊張状態にあるため実測値が高めに出ることが予想されます。

血圧計を購入し自宅で測ることもおすすめです。

 

 

心筋症

猫の心筋症には、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症に分けられ、肥大型心筋症が最も多いと言われています。

心筋症の猫の多くは無症状であることが多く、胸水貯留による呼吸状態の悪化、血栓塞栓による四肢の麻痺、突然死により初めて発見されるケースも少なくありません。

残念ながら心筋症も心臓をもとの状態に戻す治療はありませんが、症状に応じて補助的な治療を行います。

 

※無症状から突然重篤な症状(突然死など)が起こる病気の為、できれば健康診断で早期発見したい病気です。

腎臓病と心筋症が併発してるケースも多く、点滴の量や頻度には注意が必要です。

 

 

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は甲状腺からホルモンが過剰に分泌されてしまう疾患です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると以下の症状が見られます。

・興奮しやすくなる

・散瞳(黒目が大きくなる)する

・食べているのに痩せてくる

・時々吐く

・口を開けてハァハァすることがある

甲状腺機能亢進症の診断は血液検査で甲状腺ホルモンを測定します。ホルモンの数値が高い場合は甲状腺機能亢進症と診断されます。

甲状腺機能亢進症の猫は一見、元気があり食欲もあるため、あまり病気である印象を受けないことが多くあります。それ故、発見が遅れてしまうことがあります。

甲状腺機能亢進症の状態が続くと血圧が高くなり、心臓や腎臓に負担がかかります。高血圧が持続すると、心臓病、腎臓病、脳出血、失明などを突然引き起こすことがあるため注意が必要です。

治療は甲状腺ホルモンを抑える薬を内服します。薬が効きすぎてしまうとホルモン不足になってしまうため、薬の量は少量より開始し、2週間おきにホルモン値を測定し、ホルモンが安定する丁度よい薬の量を決めます。

甲状腺の腫瘍が原因となり甲状腺機能亢進症になっている場合は甲状腺を摘出する手術の適応となります。

 

 

越谷市、レイクタウン、草加市、春日部市、吉川市の方で、猫の慢性腎臓病でお困りの方は当院へご相談ください。

 

越谷どうぶつ病院

院長 岩岡