犬や猫の乳腺腫瘍について【越谷どうぶつ病院】

犬の乳腺腫瘍は未避妊の犬にでは最もよく発生する腫瘍で、とくに中年齢以降でよく見られます。
50%が良性、50%が悪性と言われていますが、良性腫瘍が悪性腫瘍に転化することもあるため、早めの治療が推奨されます。
初回発情前に避妊手術をすると乳腺腫瘍の発生率は0.5%以下まで減少します。
猫の乳腺腫瘍は全腫瘍中3番目に多く、10歳以上によく見られます。
85~95%が悪性であり、犬同様に初回発情前に避妊手術をすることで発生率が低下します。
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乳腺腫瘍の症状
犬の乳腺は左右5対、猫は4対あり、その周辺の皮下にしこりができます。
数は1つから複数個できることもあり、大きさも米粒大から握りこぶしほどの大きさになることもあります。
悪性の腫瘍では『自壊』といい、自然に腫瘍の表面がジュクジュクし、出血が起こることもあります。
リンパ節に転移し腫瘍細胞が増殖すると、リンパ節がしこり状に腫れるため、触知しやすくなります。肺に転移すると咳が見られることがあります。
乳腺腫瘍がある犬、猫の生存期間
犬の乳腺腫瘍は、リンパ節転移が認められる場合、その犬の平均生存期間は8~17カ月、リンパ節転移してない場合は19~24カ月以上と言われています。
5cm以上の腫瘍を治療せず、6カ月以上経過観察した場合は、リンパ節転移する可能性が高くなるという報告もあります。
猫の乳腺腫瘍においては発見時には25%がすでにリンパ節転移、22%が肺に転移をしているという報告があります。
腫瘍の大きさが2cm以下のうちに手術がされた場合は予後が比較的良好である一方、3cmを超える場合は、その猫の生存期間は4~6カ月と言われています。
いつ手術をするべきか
上記のことから、腫瘍が小さいほうが予後は良く、リンパ節転移を起こす前に手術したほうが予後がよいということが言えます。
また腫瘍が良性であっても悪性に転化することがあるため、良性のうちに切除したほうが転移のリスクを減らすことが出来ます。
乳腺腫瘍の治療
乳腺腫瘍の治療の第一選択は手術となります。
手術の方法には以下の方法があります。
- 腫瘍のみの切除
- 腫瘍のある乳腺領域の切除
- 片側の乳腺全切除
- 両側の乳腺全切除
切除範囲が少ないほど動物への負担は少なくなりますが、残存する乳腺から再発する可能性があります。
犬の乳腺腫瘍においては転移前に切除が行われれば予後は良好であり、再発する可能性はややあるものの、再発時に再度摘出しても比較的良好な予後が過ごせるため、部分的な切除が選択されるケースは少なくありません。
一方猫の場合は、85~95%が悪性の為、腫瘍が一つであったとしても、片側または両側の乳腺全切除が推奨されます。
片側に比べ、両側の全切除のほうが術後の生存期間が長いことが報告されています。
腫瘍が悪性の場合は、術後に抗がん剤治療を行う場合があります。
犬の乳腺腫瘍では抗がん剤治療の有効性は認められていませんが、分子標的薬が乳腺腫瘍の肺転移に有効だったという例も出ているようです。
分子標的薬は、他の抗がん剤と異なり、正常細胞を攻撃することなく、腫瘍の増殖に必要な因子を阻害することにより、癌の増殖を抑える薬です。
猫の乳腺腫瘍においては、転移が認められた場合は、術後に抗がん剤治療が推奨されています。
抗がん剤を使用することにより、手術単独と比べ、予後が有意に改善することが分かっています。
抗がん剤は最大許容量を3週間に一回投与する方法や、低用量を連日内服で投与するメトロノミック療法があります。
どちらもメリット・デメリットがありますので動物病院の主治医と相談の上、治療を進めていきましょう。
越谷市、レイクタウン、草加市、春日部市、吉川市の方で、犬や猫の乳腺腫瘍でお困りの方は当院へご相談ください。
越谷どうぶつ病院
院長 岩岡