猫の混合ワクチンについて、その効果や副作用について解説【越谷どうぶつ病院】

猫の混合ワクチンは、猫に多い伝染性疾患を予防するために複数の病原体に対する免疫を一度に与えるワクチンです。

 

日本で一般的な混合ワクチンは、3種、4種、5種などのタイプに分かれています。

 

それぞれのワクチンがカバーする病気を理解することは、飼い猫の健康管理にとても重要です。

 

当院では室内外の猫には3種混合ワクチン、外に出る猫には5種混合ワクチンを推奨しています。

 

 

ワクチン接種のメリット

  1. 命を守る
  • 重篤な感染症の予防
    ワクチンで予防できる疾患(猫パルボウイルス、猫白血病など)は、発症すると重症化しやすく、命に関わることもあります。
    特に、子猫や老猫では感染症への抵抗力が低いため、ワクチンでの予防が不可欠です。

 

2.治療困難な病気を防ぐ

  • 予防が最善策の病気
    猫カリシウイルス感染症や猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)は慢性的な呼吸器症状を引き起こしやすく、一度感染すると完治が難しいです。
    ワクチン接種により、これらの病気の発症や重症化を防ぎます

 

3.多頭飼いや外出する猫への安心

  • 集団感染のリスクを減らす
    多頭飼いや保護施設、ペットホテルでは、1匹の猫から集団感染が起こることがあります。
    ワクチン接種により、他の猫への感染拡大を防ぎます。
  • 外出する猫に必須
    他の猫と接触する機会のある猫は、猫白血病(FeLV)などの感染リスクが高いため、適切なワクチンで守る必要があります。

 

.人獣共通感染症の予防

  • 猫クラミジア感染症は、まれに人にも感染することがあります(結膜炎など)。
    ワクチン接種で猫の健康だけでなく、人の健康も守れます

 

5.医療費の削減

  • 感染症の治療は長期間で費用も高額になることが多いですが、ワクチンで予防すれば経済的負担を減らせます。
    予防にかかる費用は、治療費に比べて圧倒的に安く済みます。

 

猫の混合ワクチンの種類と予防できる病気

3種混合ワクチン

 

  1. 猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)
    • 強い下痢、嘔吐、発熱、脱水を引き起こす。
    • 感染力が強く、特に子猫が重症化しやすい。
  2. 猫カリシウイルス感染症
    • 口内炎やくしゃみ、鼻水、結膜炎などの症状。
    • 重症化すると肺炎を引き起こすことも。
  3. 猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)
    • 鼻水や結膜炎、発熱などの風邪症状。
    • 慢性的な呼吸器トラブルを残すことがある。

 

5種混合ワクチン

 

  • 3種混合ワクチンの対象に加え、

猫クラミジア感染症

  • 目の炎症(結膜炎)や呼吸器症状を引き起こす。
  • 多頭飼いで感染しやすい。

猫白血病ウイルス(FeLV)感染症

  • 免疫不全や腫瘍を引き起こす。
  • 他の猫との接触が多い場合に特に推奨。

 

ワクチン接種のスケジュール

  1. 初回接種(子猫)
    • 8週齢頃から開始し、3〜4週間間隔で2〜3回接種。
  2. 追加接種(ブースター)
    • 1歳時に再接種。
  3. 成猫の定期接種
    • 一般的に年1回。ただし、抗体価検査において十分な免疫が確認できる場合は2~3年に1回のケースもあります。

 

 

ワクチン接種後の注意点

  • 副反応:軽い発熱や元気消失が見られることがありますが、通常は数日で回復します。まれにアレルギー反応(顔の腫れや嘔吐)が起こる場合もあり、その際はすぐ当院へご連絡ください。

 

  • 接種の判断:完全室内飼いの猫と、外出する猫では必要なワクチンが異なります。外部の猫と接触する可能性がある場合は、5種混合が推奨されます。

 

ワクチン接種部位肉腫について

 

ワクチン接種部位肉腫(Vaccine-Associated Sarcoma, VAS)は、猫の体にワクチンを接種した後、稀に発生する悪性の腫瘍(主に線維肉腫)です。

これは、ワクチンや注射薬に対する炎症反応が長期にわたって続くことで腫瘍が形成されると考えられています。

 

症状と発見方法

  • 注射後数ヶ月〜数年で腫れが出る場合があります。
  • ワクチン接種部位(通常、肩甲骨周辺、大腿部、側腹部)にしこりや腫れが残る。
  • 触っても痛がらない場合が多いですが、次第に大きくなり、皮膚に癒着することもあります。

 

重要なポイント3-2-1ルールで腫れをチェック

 

  1. 腫れが3ヶ月経っても消えない
  2. 2cm以上の大きさになる
  3. 1ヶ月以上で腫れが大きくなり続ける

これらに該当する場合は、当院へご相談ください。

 

 

予防と治療法

予防策接種部位の工夫

  • ワクチン接種を側腹部や大腿部に行うことが推奨されます。
    → 腫瘍ができた場合でも、切除が容易になるため。

 

必要最小限のワクチン接種

  • 抗体価検査を行い十分な抗体が認められる場合は、ワクチン接種の頻度を減らすことができます。

 

ワクチンの種類を選ぶ

  • アジュバント(免疫補助剤)を含まないワクチンを使用することでリスクを減らせます。

 

治療方法

外科的切除

  • 腫瘍が診断された場合、広範囲切除が必要です。

完全に取り切るため、通常よりも大きく皮膚や筋肉を切除します。

 

放射線治療

  • 再発リスクが高い場合、切除後に放射線治療を行うことがあります。

 

化学療法

  • 腫瘍の進行度に応じて抗がん剤を使うこともあります。

 

 

越谷市、レイクタウン、草加市、春日部市、吉川市の方で、猫のワクチン接種をお考えの方は当院へご相談ください。

 

越谷どうぶつ病院

院長 岩岡